介護保険制度は、2000年4月に「介護の社会化」を目指してスタートしました。10年が過ぎようとしていますが、市民参画を謳ってはいるものの、改正のたびに複雑な仕組みとなり、当事者である利用者やその家族にとって、使いやすいものになってはいないようです。
3つの市民セクターが、これまで介護の現場での活動や市民と一緒に進めた実態調査をもとに、2012年の介護保険改正に向けた政策提案をまとめ、4月27日、3団体が一堂に会し、衆議院第二会館において民主党議員の石毛瑛子さん、大河原雅子さん、初鹿あきひろさんらの出席のもとで院内集会が行われました。、
●特定非営利活動法人 アビリティクラブたすけあい(NPO法人ACT)の香丸眞理子さんより、883人の利用者調査と34人のヒアリングをもとに生活援助の有効性について報告がありました。訪問介護の「生活援助」は介護度の区別なく利用者の意欲を向上させ、確実に介護の重度化を予防することが期待できるサービスであり、介護保険制度から「生活援助」を外さないようにという提案がされました。
●東京・生活クラブ運動グループ福祉協議会の松浦恵理子さんからは、3年間の介護予防調査より、自立支援に関する高齢者の実態の報告がありました。
介護保険制度を介護が必要な人にとって安心して利用できる制度としていくことを基本に考えれば、介護予防という施策の範囲は、誕生から生涯健康で暮らすための保険事業との連携を図った上で、年齢に応じた、心身ともに健康な生活を維持していくことを支援する施策でなければならないとし、介護予防への提言がされました。
●「神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会」の和泉香代子さんより、介護保険事業者として、介護保険が使いづらい利用者の実態についての報告がありました。利用者とその家族を継続的に支援していくために利用者がケアマネジャーやケアプランを選べる仕組みにすること、また、地域包括支援センター機能として、地域に住むすべての人々に対する総合相談窓口機能を持つことが必要であるという提案がありました。
約1時間という短い集会でしたが、広い会場は参加者で埋め尽くされ、介護保険制度改正への関心の高さがうかがわれました。官でも民でもないもう一つのセクターを社会の中で大きくしていくことが、住み慣れた地域で安心して最後まで暮らすためには鍵となることを痛感しました。<いちかわ・かずこ>