建設委員会行政視察③ 大阪市生野区南部地区密集市街整備事業

ワークショップによる「まちかど広場」づくり

ターザンロープのある「はやしじ自然ひろば」
ターザンロープのある「はやしじ自然ひろば」
老朽住宅密集市街地の整備は、住環境整備や災害に強い安全なまちづくりをすすめていく観点からも非常に重要な課題です。

大阪市生野区南部地区は、戦前の木造住宅、中小零細業が集中する、市内でも屈指の密集市街地、典型的な下町です。市は、100平方メートルのエリアを密集市街地再開発の「モデル地区」と位置付け、1995年の阪神・淡路大震災の発生直後に、住宅市街地整備総合支援事業とし、その後、事業認可を受けました。94年には、事業地区内の町内会に要請し、「地区まちづくり協議会」を発足させています。

整備にあたっては、特に老朽化の著しい住宅の密集した地区を限定的にクリアランスするとともに、その他の地域について、民間による自主建替えの促進とあわせて、道路や公園、まちかど広場等の公共施設整備をー体的に行うなど、「古くからのコミュニティも生かした活力あるまち」への再生を図っています。

ワークショップによる「まちかど広場」整備
市は、民間未利用地を買収し、周辺住民に呼びかけ、要求、意見を出し合い、提案をまとめるワークショップ方式で「まちかど広場」を6カ所つくりました。
井戸から水を汲み上げて流したり、一方では冒険広場として、ロープを利用して子供が遊べるような広場を見学しました。通常ならば「危ないからやめておけ、管理も大変だから」と反対されるものですが、自分たちで管理するということで、地域住民で「管理運営委員会」をつくり、地域の共有したシンボルとして、子どもの遊び場や、高齢者のだんらんの場、地域の夏祭りやもちつきなどのイベント会場として、コミュニティーの源にもなっっているということです。数箇所を見学しましたが、どこもゴミ一つ落ちてない管理が行き届いた広場という印象を受けました。

品川区も東京都でも屈指の密集市街地を抱え、災害に強いまちづくりの取り組みがすすめられています。
地元でそれをやろうという機運が高まらないとなかなかこうした取り組みは難しいものです。

安全で安心して誰もが住み続けられる街、地域住民が住んでよかったと愛着を覚える街—このような街づくりは、行政主導や民間ディベロッパーの活用だけでは実現できません。住民参加が保障されてこそ、一歩一歩実現する可能性を生む・・・
生野区のご説明の中では触れられていませんでしたが、10数年の間には様々な住民の要求運動や、それにこたえる行政の知恵と工夫と努力があったのではと想像しました。たとえば、住民参加の保障や会議や議事録の情報公開など…。
生野区南部地区の事例より改めて住民参加の意義を感じました。
<いちかわ・かずこ>

写真下:ワークショップに参加した皆さんの思い思いのサインがありました。広場によって特色があります。