トップダウンの教育行政から「学びの共同体」へ

子どもに生きる力と勇気を

新しい取り組みをすることで知られる品川区。計画が一気に実施される要因は、計画段階での情報が公開されず、トップダウンで強行されてしまう行政運営にあります。教育行政においても同様で、通学区域自由化、小中一貫校6校構想の決定と、小中一貫教育の全区展開、そのどれをとっても説明や議論の場が提供されないばかりか、市民合意が形成されたとはいえず、納得できない区民の声が多く聞かれます。

先日は、荏原2中の在校生とその保護者の方たちから区民相談がありました。区では一貫校建設の推進にあたり平塚小中学校を合築の予定ですが、ここに来て突然、次年度には、荏原第2中学校をも統廃合しようという計画が持ち上がったのです。この計画はそれまでは現れていなかったものであり、選択性のもとに荏原中学校に入学し、同校で卒業年度を迎えたいと願う生徒や親たちの混乱は当然のことであろうと思うのです。教育行政への市民参加が問われる今日において、このような不透明な決定が放置されてよいのかは大きな疑問といわざるを得ません。

 昨今は、品川の教育改革がマスコミにも大きくたびたび取り上げられています。独自カリキュラムによる市民科の創設や習熟度学習など、一貫教育推進のための積み上げが注目されていますが、果たして「学びの目標である「子ども自身の育ち」につながっているかというと、その根拠は見出せないままであり、むしろ学校間格差や競争教育の再燃を危惧する声も大きく聞かれるのが実態ではないでしょうか。
一方で、深刻さを増すいじめの問題や教師が子どもと日々向き合える環境づくりへの認識は薄く、また、義務教育中の子どもの3人に一人がなんらかの就学援助対象である品川区において、学びのスタート時点ですでに生じている教育格差解消策も明らかではありません。未来を生きる子どもたちが夢と希望を叶えられよう、区は大急ぎで公教育のありようを当事者参加で検証し、今後の方針をともに展望し再スタートを切るべきではないでしょうか。

私はトップダウンの教育から、子ども自身や市民が参加して、地域から学校をつくっていくコミュニティスクール形態の教育へと転換していくことが必要だと思っています。学校を「学びの共同体」へと変えていくことが、人と人との会話がこだまする地域づくりにつながるに違いないからであり、子どもが自ら育つ環境づくりに、欠かせないことだと思っています。<いちかわ・かずこ>