介護保険制度に縛られない支援が求められている

ケアワークを公共労働と位置づけ、労働環境を整備するとき

  先日、たすけあいワーカーズを拠点にホームヘルプなどで活動する皆さんと、懇談する会をもちました。高齢者世帯や子育て家庭などの家事・介護・保育や様々な相談ごとまで引き受ける「たすけあいワーカーズたんぽぽ」が品川に生まれたのは昨年秋。そもそものきっかけは、さかのぼること2年前、品川・生活者ネットの水曜サロン『ヘルパーさん、何でも話そう!』に集まった現役ヘルパーさんの不満や疑問の声でした。「日常的なケアが求められているが、介護保険制度ではサービスの対象外となってしまう」「もっと利用者の身になったケアがしたい」、そうした声が制度に縛られない生活支援の必要性と自らの働き方を考えるきっかけになったのです。その後有志で仲間を募り、NPO法人ACT(アビリティクラブ・たすけあい)での研修、学習会や見学会を重ね都内34番目のワーカーズとなったのが「たんぽぽ」です。

  全員が出資し、運営に参加し、労働も担う新しい働き方を実践しているたすけあいワーカーズは、ホームヘルプサービスの他、様々な事業を行っています。掃除・洗濯・食事作り・身体介護・食事介助・通院・産前産後のお手伝いや保育など、その領域は多岐にわたりますが、この日は主に品川の高齢者福祉や介護問題について意見を交換しあいました。

  懇談会からは、「利用者、その家族であっても介護保険を理解している人は少なく周知はまだまだ足りない」「在宅ケアの充実や地域密着型というが、遠隔地の施設に入らざるを得ない高齢者が増えている」「介護度の枠を使いきるのではなく、最初から余らせる方式で介護計画を事業者が立てるのはおかしい」「福祉機器やサービスの充実もケアマネジャーの質にかかってくる。にもかかわらず継続して働ける環境整備は整っていない。良質のケアマネの確保は急務」「民間ではホームヘルパーは登録制で、80時間以上働けば雇用保険がつくが、利用者が病気などで入院した場合、時間数が減り保障がなくなる。社会保障(年金・健康保険)がないなど不安定な雇用環境であり、女性のヘルパーが使い捨てられている」など、問題点が多数出されました。

  「介護や子育てなどのケアワークは社会が担うべき’公共労働’と位置付け、最低賃金保障や社会保障の付加、研修の保障などを行なう」というネットの政策の背景にある、労働の現場も知ることとなりました。
  制度改善はもちろんですが、今後のパート労働法の改正論議も注視しつつ、労働環境の底上げにつながる「公契約条例」などの提案を地域から発信することが、サービスの質の向上にも繋がることを実感する場となりました。<いちかわ・かずこ>